「コーチの魅力は、学生の人間教育に携われること」 テンプル大アメリカンフットボール ジェフ・コリンズヘッドコーチ

 2018年5月、アメリカNCAA1部に所属するテンプル大学アメリカンフットボール部のコーチと選手が来日し、クリニックやシンポジウムなどを通じて日本の学生たちと交流した。JCAでは同大のジェフ・コリンズヘッドコーチ(HC)に単独インタビューを行い、同部の取り組みや、指導者として大切なことについて話を聞いた。

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Q:コリンズHCは何かを成し遂げる時に、正しいやり方で勝ち取ることが重要だとおっしゃっています。正しいやり方とは具体的にどういうことでしょうか。

A:チームメイトや学校、自分に関わるあらゆる人に感謝をするなど、日々のプロセス一つ一つを大切にすることです。例えば、日本でも相撲の横綱になるためには技術だけでなく、人間的に優れている必要があります。まったく同じことです。


Q:コーチの役割として大切なことは何でしょうか。

A:基本的には、チームのカルチャーを強化することが最も大切なことです。フィールドでのプレーが優れた選手を育てるのではなく、いかに人間的に素晴らしい選手を輩出するか。学生たちが将来、父親として、社会人として活躍してくれることが目的です。


Q:教育者であるコーチにとって、最も大事な資質は何でしょうか。

A:思いやりです。純粋な気持ちで、この人たちを成功させたいという気持ちを持てるかどうか。本気で学生の人生の手助けをしてあげたいと思えるかどうか。この気持ちさえあれば、他のことはそれほど重要ではありません。


Q:コリンズHCのキャリアについてお聞きします。卒業後、コーチの道に進もうと思った理由は何でしょうか。

A:高校、大学で恩師と呼べるコーチたちと交流することで、この職業に魅力を感じました。素晴らしいメンターたちと出会ったことが、私がコーチになった理由です。最終的にはプロチームのコーチよりも、日々学生たちの人間教育に携わることができる、大学のコーチに最も魅力を感じました。


Q:アメフトのコーチだけでなく、人事ディレクターなど様々なポジションを経験されています。純粋なコーチ以外の仕事はどのように役に立っていますか。

A:アラバマ大でニック・セイバンコーチ※の下で学んだ経験が大きいです。24時間365日、彼と一緒に過ごして、すべてのミーティングを共にしました。また、約2年間、オフフィールドでリクルーティングやチームマネジメント全体について学ぶ期間がありました。この経験も、現在HCを務めるにあたって重要な過程だったと感じています。

※アラバマ大を全米王座に何度も導いている名将


Q:リクルーティングの時に、アメフトの技術や身体能力以外で何を重要視していますか。

A:もちろん、最初は身長や体重、アメフトの技術をチェックします。それ以上に重要なのは、どれほどハードワークできるか、先生や両親などに感謝しているか、精神的にも肉体的にもタフであるかということです。高いレベルでの勉強とアメフトの両立が求められるテンプル大でアメフトをすることは、とても大変なことです。中途半端な学生には務まりません。両親や学校の先生、友人はもちろん、床屋さんにまでインタビューしてあらゆる情報を集めて、人間性を掘り下げます。


Q:アメリカの学生スポーツ全般で、勉強との両立が重要視されています。なぜ勉強をしないと、スポーツのパフォーマンスに影響するのか。スポーツだけではだめなのでしょうか。

A:勉強とスポーツは100%連携しているものだと考えています。勉強をしっかりできれば、フィールドでもいいパフォーマンスが出せる。我々はGPA(学業の成績)でも良い数値を出していますが、毎年さらに上を目指しています。そうすることで、アメフトにおいてもより良いチームになると思っています。


Q:米国の大学スポーツにはアカデミックアドバイザーがいて、勉強について学生の相談に乗っています。コーチはアドバイザーや学生とどのようにコミュニケーションを図っているのでしょうか

A:フルタイムのスタッフは5人いて、日々学生の勉強について相談に乗るなどの対応をしています。週に一回は選手全員の成績と次の試験はいつなのか、アカデミックアドバイザーから各ポジションコーチに情報が共有されます。それらの集約された情報を私が把握した上で、必要があればフォローするという仕組みです。システムとして完成されています。


Q:チームの中にはプロに行く学生と、そうでない学生がいます。接し方で何か変えていることはあるでしょうか。

A:原則、すべての情報を正直にオープンに伝えることを心がけています。あなたはチームで現在どの位置にいるのか、次のステージに行くにはどうすればいいのか、率直に適切なアドバイスをします。レギュラーになるためには、NFLに行くためには、と人それぞれフェーズもゴールも違うので、アドバイスも千差万別です。


Q:日本人の多くのコーチはチーム内でディシプリン(規律)を確立できなくて悩んでいます。100人を超える巨大組織において、どのようにディシプリンを保っているのでしょうか。

A:まず、最も大事なことは教育です。暴力、ドラッグなどあらゆるリスクがありますが、何かあった時に反応して罰を科すのではなく、事前に防ぐことが重要です。第一にテンプル大のアメフトのスタンダードとは何かを、しっかりと教育します。ゲストスピーカーを呼んだり、ソーシャルメディアのガイドラインを指導したり、取り組みは様々です。問題が発生する前の教育が、ディシプリンの基盤になっています。


Q:アメリカの大学スポーツは地域と一体となっていることが大きな特徴で、日本でもそれを目指している学校が存在します。地域住民のロイヤリティーを高めるためには、どのような取り組みが必要でしょうか。

A:大学スポーツは「大学の玄関」であるということについて、大学関係者が共通認識を持っていることが重要です。物理の授業で学校を知ってもらうことはできませんが、スポーツプログラムによって、広く学校を認知してもらうことはできます。スポーツは学校であれ地域であれ、コミュニティーを一つにする力を持っており、それが大学のブランド化につながるのです。