【JCAお悩み相談室vol.6】威圧的な指導をする年配の指導者との意見の相違について

◎今週のお悩み

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野球の指導現場で一番悩んでいることは、古い指導者に新しいことを取り入れようという感覚が少ないことです。 未だに少年野球の現場では罵声が響き、その罵声が原因で選手のモチベーションが下がっています。

注意、指摘は必要だと思いますが、選手のやる気をなくさせるような言い方ばかりです。 私が違う言い方をすると、「そんな風に優しく言ってはダメ」と否定されます。 確かに私がすべて合っているわけではないでしょうし、古いやり方がすべてダメとは思っていませんが、聞く耳を持たないので、話し合いが成立しません。

少年野球の競技人口は減少傾向にあると思います。特に中学軟式野球は... 小学生の時に罵声を浴びせられ過ぎた子どもたちの中には、競技をやめてしまう子もいます。 全国大会に出るようなチームでも暴力があると聞いていますし、実際に見たこともあります。

早くこの現状を変えないといけないと本気で思っていますし、毎週末努力しています。野球界を少しでも変えるために、何か良い方法があればアドバイスをよろしくお願い申し上げます。

(東京都 中学・軟式野球部コーチ 男性)


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◎大久保秀昭 慶應義塾大学 硬式野球部監督の回答

まずは中学生の指導、ご苦労様です。
相談者の方は年配の指導者との意見、考えの相違を、ご自身のチーム、ひいては日本の少年野球全体について悩んでおられるようですね。このようなケースは、よくあることだと思います。
まずご自身のチームの場合、監督の指導方針は明確になっているのでしょうか?
チームの目指すべき姿は何なのか?
一番大事なのは、子どもたちを野球を通じてどう成長させていきたいのか?
これらを、ご自身と年配の指導者の方(この方が監督と思われますが)はどう理解しておられるのでしょうか。
そして、選手である子どもたち、父母の方には伝わっているのでしょうか。

方針が明確で理解して入部しているのであれば、厳しい指導と受け止めて納得されている可能性もあります。高校や大学野球では厳しさを求めて信頼できる指導者の下に自ら飛び込んで行く子どももいるし、預ける親御さんもいます。中学生のチームでもあると思います。逆に、怒鳴り散らすなど厳しい指導を行う監督、指導者がいるチームであることを伝えずに入部させるような状態であれば、考えなくてはいけないですね。

野球での指導は今は決められた教科書があるわけではないので、基本的には監督の指導方針に従うことになります。他競技も同じケースがほとんどだと思いますが、サッカーのようにライセンス制でもあれば、まだ指導方針も明確で分かりやすいチームが増えるかもしれませんね。

指導方針で言えば、相談者の方の意見が今の時代に適した指導だと私も思いますし、私も選手年齢が若ければ若いほど野球を楽しむ姿を大事に、野球を嫌いにならない指導が大切だと考えています。楽しみながら生き生きプレーをする子どもたちがたくさんいるチームが、良いチームだと思います。しかしながら、年齢が上がれば上がるほどそういう姿での野球ではなくなってしまうのが現状です。

ですから今は、相談者の方も指導の方針の多様性を見極め、良く学び、様々なアプローチの仕方を身に付け自信を持って目の前の子どもたちに接してあげてください。その結果、子どもたちが犠牲にならないことを考えながら、チームを離れるのも選択肢の一つになっても仕方ないと思います。

しっかりした指導をする、指導者の年齢に左右されないチームもたくさんあるはずですから。そこから、ご自身が目指すあるべき姿を広げていく、という考え方もあると思います。無ければ自分で作ってしまうのもいいかもしれないですね。

相談者の方と同様、野球界の将来を考えている大人もたくさんいますし、プロ野球はじめ各団体が色々な取り組みもしていますが、野球人口の減少は年々加速してしまっているのもおっしゃる通りです。有効な具体策を模索しているところです。

危機感を強く持ちながら、野球界に携わっている者としての役割をお互いに果たしていきましょう。

◎大久保秀昭(おおくぼ ひであき)のプロフィール

1969年生まれ。捕手として桐蔭学園から慶應大学に進み、アトランタオリンピックでは銀メダル獲得に貢献。 1996年に近鉄バファローズに入団。2001年に現役を引退した後は、新日本石油ENEOSの監督として選手育成の手腕を発揮。都市対抗野球大会では史上最多タイの3度の優勝を果たしている。現在は、母校である慶應大学野球部の監督を務める。第1回ジャパンコーチズアワードでは最優秀コーチ賞、第5回ジャパンコーチズアワードでは優秀コーチ賞を受賞している。

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