"遊び"の減少による子どもの体力低下 〜第1回JCAアカデミー、特別インタビュー〜

ジャパンコーチズアソシエーション(JCA)は11月21日(水)に有明の株式会社ドーム本社にて、第1回JCAアカデミーを開催いたします。当日のアカデミーで講師を務めるドームアスリートハウスの友岡和彦氏に、現代の子どもたちを取り巻く環境の変化と、体力低下の問題点について語ってもらいました。

※JCAアカデミーにご参加希望の方は以下の会員サイトにログインの上、イベントページより事前申し込みをお願いいたします。

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Q:8月に福島県いわき市で開催された全国小学生硬式野球交流大会「アンダーアーマーカップ」で、子どもたちの体力測定を実施されました。どのような結果が出たのでしょうか?

A:身長・体重や背筋力、スラロームランなど全部で8種目の測定を行いました。詳細はJCAアカデミーでお話ししますが、得意な種目と苦手な種目で数値に大きな偏りがあり、総合的にバランスが取れていないという結果が出ました。

Q:なぜ、そのようなことが起きているのでしょうか?

A:野球の練習を週に2回やっているとして、野球で使わないところ(体の機能)はそのままです。昔は違うスポーツや鬼ごっこ、缶蹴りをするなど、遊ぶ時間が圧倒的に長かった。今は公園で球技も禁止されていますし、子どもたちが遊ぶ時間や場所が制限されてしまっています。

Q:遊びによって体力がつくということを、もう少し詳しく説明してください。

A:例えば、赤ちゃんが歩けるようになるためには、時間の経過ではなく、動ける環境が必要です。様々な動きによって筋肉が連動して、関節の形状も変わり立てるようになります。寝返りや這うといった、各発達段階で必然的に行うべき運動を自然と行うことによって、体幹部や各関節が安定するのです。赤ちゃんの発達段階の運動は究極のトレーニングといえるでしょう。また、幼少期に様々な遊びやスポーツに取り組むことによって、バランス良く身体能力が向上するのです。

Q:子どもたちの遊ぶ環境が制限される要因の一つとして、リスクの排除があります。

A:棒倒しはダメ、綱登りはダメ。少しでもリスクのあるものは禁止され、どんどん簡単で楽なものばかりになっています。動作の習得においては、危険性を感じることが重要です。危険性を認知するからこそ、自己防衛として身体の安定性や可動性が自然に身に着くといえるのです。安全で、楽な状況では、神経系への刺激はあまり強いとは言えません。ある意味でバリアフリーもそうなのですが、危険性を排除していったら能力が削られて何もできなくなります。まさに、人間は環境の動物なのです。

Q:では実際にどのような取り組みが必要なのでしょうか?

A:暦年齢と生物学的年齢の違いを認識した上で、何が優れているのか見ていくことが必要です。レーダーチャートにして年齢の平均値と比べて、弱い部分を補っていきます。フィジカルトレーニングなども学年ではなく、生物学的年齢に合うものをやらせるべきです。小学生くらいまでは遊びも含めて様々な動きを習得し、競技に特化していくのは中学生からで十分だと思います。

Q:一方で幼少期からの英才教育が必要という考え方もありますが。

A:確かに器械体操や水泳など、競技特性によっては早い時期から特化せざるを得ないスポーツもあります。しかし、一つの競技に特化したエリート教育をすると、技術は伸びますが他のことができなくなる。アスリートとして早熟になってしまう傾向が強いです。早期のスペシャリゼーションをして成功するのは体重の増減にパフォーマンスが関係する新体操やフィギュアスケートなどごく一部。ユースの世界大会で活躍した選手が、大人になって伸び悩む例はたくさんあります。大成する選手は、幼少期に他のスポーツも経験している割合が多いです。日本では早期のスペシャリゼーションの例が多く、改善する必要があると思います。

Q:劣っている能力を、大人になってから伸ばすのは難しいのでしょうか?

A:もちろん、ある程度は改善することは可能です。しかし、メジャーリーグのトレーナー時代にも経験したのですが、いくら動作改善をしたり、筋肉を鍛えたりしてもどうしようもないこともたくさんあります。けがの多い選手に、いきなり柔軟性をつけようとしても厳しい。食生活も運動習慣もそう。子どもの頃に身につけるのがベストなのです。

Q:トレーニングや栄養をはじめとしたスポーツ科学の知識を持つ指導者も増えてきて、少しずつ意識が変わってきています。

A:徐々にトレーニングを体験して育ったコーチが指導者の世代になっています。昔の人たちは、アイシングもトレーニングもやっていなかった人が多いです。10年後はもっとトレーニングが当たり前になり、スポーツ科学に基づいた指導が主流になっていくでしょう。

Q:遊びや様々なスポーツに親しむことのメリットを、違う視点からも指摘されています。

A:子どものスポーツ離れが進んでいます。スポーツエリートとまったくやらない子に二極化していて、やめてしまう最大の理由は楽しくないからです。みんながトップ選手になるわけではありません。子どもの頃はスポーツに親しみ、楽しむことで運動習慣をつけて健康である方がいい。もちろん、「楽しい=楽なこと」ではなくて、辛いことを歯を食いしばって頑張ろうと思える環境を提供して、できなかったことができるようになったという"楽しさ"もあります。指導者は、まず"スポーツのFUN"を教えてあげるべきだと思います。

友岡和彦(ともおか・かずひこ)のプロフィール

JCA理事。1971年生まれ。95年に立教大学を卒業後渡米し、98年にフロリダ大学Exercise&Sports Science学科を卒業。99年から10年間、フロリダ・マーリンズなどMLB3球団でストレングス&コンディショニングコーチを務める。08年よりドームアスリートハウスでパフォーマンスディレクター兼ゼネラルマネージャーに就任し、多くのアスリートをサポートしている。