「チーム作りで最も大切なことはカルチャー」 米国セント・ジョーンズ高校 カズコーチ

チームを強くしたい。がんばっている選手たちを勝たせてあげたい。スポーツ指導者であれば程度の差こそあれ、誰もがこう思っているはずだ。ではチームを強くするために何が必要なのか。今回、JCAではアメリカンフットボールの強豪チームである、米国セント・ジョーンズ高校のカズコーチにインタビューを行った。チーム作りで大切なことや、そのプロセスとは。

まず、私が現在の指導方法に至った経緯をお話ししましょう。

20歳の時、初めてコーチという職業に就く機会をもらいました。しかし、そこはアルコール、ドラッグ、不登校が蔓延した大きな公立学校で、かなり荒れたどうしようもない環境でした。そこで校長から最初に求められたのは、「この環境をなんとか良くしてくれ!勝ち負けは問わないから、まず正常な状態にしてくれ!」というものでした。

若くて経験のなかった自分は、とりあえず厳しい規律を設けました。すると、最初50人いた部員は34人に減り、リーグ戦で3勝(6敗)しかできませんでした。そのシーズン、私がチームに伝えたことは2つ。ビジョンと、チームが持っている価値は何なのかです。勝ち負けに関しては一切触れませんでした。倫理観を持つ、尊敬する、規律を守る、献身的である、従順である、自信を持つ。この6つの価値の浸透を徹底的に行いました。結果、その年(1971年)は3勝しかできませんでしたが、それ以降は成績が上昇していきました。何をしたら良いか分からなかったのですが、カルチャーを強く変えたことで翌年、学校史上初となるチャンピオンシップ(優勝)を勝ち取ることとなったのです。そして、その後7回の優勝を経験できました。

「勝った」ということで、とたんにみなが私のことを"Great Coach"だと口々に言いましたが、私はまだまだそう言われるに値するとは思っていません。とにかく、カルチャーを変える事が重要だと繰り返しました。

それを機に、NPO団体からの依頼で大学、高校のチームや会社でのカルチャー作りの講義を持つことになりました。そこで教えることは、カルチャーがチームに大きく影響し、それがチームのすべてだということ。パフォーマンスも重要ですが、ビジョンやカルチャーの重要性を理解しなければ、好成績は長続きしません。よって、特に新しいコーチを招聘したり、メンバーが大きく入れ替わったりした時は、カルチャーを叩き込むことを最優先にすべきです。

カルチャーの中で最も重要なことは、チームが選手を必要とする以上に、選手がチームを必要とすることです。選手はチームの一員だという認識を持って初めて役割を意識し、コーチの言うことを聞きます。そして、これは教育の一部であるということ。スポーツは教育であり、スポーツによって個々の性格が現れる。これはとても重要な教育的要素です。アメリカにおいては戦術や技術で勝とうとする人間が多いですが、大事なのはカルチャーや性格で勝つということなのです。

残念ながら、教職員ですら学校のビジョンやバリューについて理解できていない人が多いです。しかし、私はそれらのことを、スポーツを通じて選手たちに教えています。なぜなら、選手がそれをきちんと理解することで、強いチームを作ることができるからです。

たとえ選手個々の才能が相手より劣っていたとしても、カルチャーを中心とした強固なチーム力があれば、勝算は十分にあります。何度も言いますが、選手にはチームのビジョンをしっかり共有しなくてはいけません。そして初めて、彼らが価値を理解することができます。

私がこの学校でコーチをすることになった時、選手全員と面会しました。事実、中には私の考え方に共感しない選手がいました。そういう選手には考えを変えるか、チームを去るかの二択を迫りました。

その時、周囲は何人かの有望選手がチームを去っていくことをとても心配していました。ただ、私の考えに理解を示し残った選手たちは、チームが一つになったことについては、感謝の念を示していました。そして最終的に、学校として初の優勝を達成することができたのです。

まとめると、まずお互いに腹を割って話し、ビジョンを共有することです。例えチャンピオンを目指すという目的が一致していても、そこで終わらずにその先まで話します。お互い尊敬できるのか、規律は守れるのか、献身的であるのか、ということです。そうすることで、共通の価値が作り上げられます。

必ず振り返りを行い、選手一人一人と話をする必要があります。1~10で点数をつけて振り返り、もし7点ならなぜ10点ではないのかを話し合います。話し合えばお互いを理解することができ、問題を解決するきっかけになります。問題が発覚した時、解決するためのプロセスを考えるようにすることも重要です。プロセスというのはとても重要で、ゴールに向かってどう進んでいくかを考えるもの。どの大学にリクルートされるなど個人的なことではなく、チームとしてのゴールに向かってのプロセスです。

次に、チームには80人も選手がいるので、それぞれが役割を認識しないといけません。スターターとしてフィールドに出るのは11人だけですが、全員に役割があります。フィールドでもサイドラインでも、すべての選手が「全員が役割を果たすことが大事」ということを理解しないといけません。そして、一人ひとりに与えられた役割を、個々が100%遂行しなくてはいけません。そして、成功するための努力をしなければいけません。個人的な欲ではなく、チームのために行動できる選手になるということ。

最後に、コーチのみなさんに対して言いたいことは、愛を持って接することです。コーチが選手を愛しているということを、選手は理解しなくてはいけません。そこに愛がなければ、そのために努力しなくてはいけません。選手に話しかける時、注意する時、愛を持って話しているということを伝えなくてはいけません。愛がないのに、なぜ選手は耳を傾けなくてはいけないのか。私はアメリカ中を飛び回っていろんな人と話をしますが、決まって言うことは、コーチは最もコミュニティーの中で力のある存在だということです。若い選手はコーチのようになりたいと思いますから。コーチは子どもを親から預かり、立派な選手にして返す義務があります。子どもたちにはすぐに理解できないと思いますが、それが親たちがコーチに求めているものです。

もう一つ付け加えるなら、チームは一つの家族のようでないといけません。ヘッドコーチが親、アシスタントコーチは兄貴姉貴分という感じです。先週の話ですが、月曜日が祝日で学校はないけど練習はありました。そして、何人かの選手は事前に連絡もなく、時間通りに練習に来ませんでした。私はヘッドコーチであり親として、叱らなければなりませんでした。これはチームの規律であり、そこで叱らないとチームに亀裂が入ってしまうからです。誰も特別扱いすることなく、みなをフェアに扱います。それがカルチャーであり、崩れてはならないものだからです。愛というのは本当に力強いもので、愛がカルチャーを作ると言っても過言ではありません。どれだけ勝とうが、好成績を残そうが、カルチャーが最も大事なことには変わりないのです。私は1971年に6敗して以来、2試合以上負けたシーズンは今までに7回しかありません。要するに勝つチームを作ってきました。その基礎となっているのはカルチャーであり、そのおかげでが強いチームを作ることができたのは間違いありません。


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