ハワイで学んだ、アメリカの「大学スポーツカルチャー」 筑波大学女子バレー部・中西監督インタビュー

第6回ジャパンコーチズアワードで優秀コーチ賞を受賞した、筑波大学女子バレーボール部の中西康己監督が、3月5日から10日まで、ハワイ大学を視察されました。

筑波大学は昨年、体育会運動部の活動を学校の正式な教育プログラムとすべく、日本で初めての本格的なアスレチックデパートメント(AD)を設置。同部もADが管轄する5チームのひとつとして活動しています。
今回、米国の学生スポーツの現場を訪れて得た学びや気付き、また、それらを筑波大学のADやバレー部の運営にどのように生かしていくのか、中西監督に話をうかがいました。

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Q.ADが設置されて、筑波大学は世間の注目を浴びています。

A.反響はとても大きいです。いろいろなチームが筑波に来て練習試合をするのですが、どのチームの監督さんも、筑波のADについて興味を持たれています。皆さん日本の大学スポーツの変化を敏感に感じ取っていて、「筑波のバレー部は今後どうしていくの?」とよく聞かれます。
チームとしての希望や学連との関係などいろいろありますが、筑波のADに所属しているので、まずはその方針を尊重して従っていくというのが前提です。

Q.今回、ハワイ大学を視察した経緯を教えてください。

A.昨年10月、男女のバレー部が正式にADに加わりました。その前の準備段階から、当時のAD設置準備室の室長だった安田さん(安田秀一ドーム代表取締役CEO)と個別に話をしていました。部の活動として困っていることなどをお話しする中で、一番訴えたのは選手の練習環境などを整備したいということでした。
今回、一番の見本となる米国のADと、ホームで開催されるバレーボール部の試合を同時に見る機会があったので、参考にするために学生たちと訪問しました。

Q.学生はどのようなメンバーを連れて行ったのですか?

A.男子バレー部から2人と女子バレー部から2人の合計4人です。男子は、ゲーム分析ができるアナリストの1、2年生。女子のうち一人は2年生で、もう一人は昨年キャプテンを務めた卒業生です。彼女は今後も実業団チームでプレーを続け、バレーボール界に関わっていく予定です。

Q.ホームゲームはどのように運営されていましたか?

A.4チームが3日間をかけて、総当たりで対戦するという大会でした。大会はすべてハワイ大学のADによって運営されていましたが、ハワイ大学が出場する試合は3階席まで満員になっていました。チャンピオンシップでもないのに、通常のリーグ戦であれだけ席が埋まり、家族連れでアリーナがいっぱいになるのはすごいことだと感じました。

Q.試合の告知はどのように行っていましたか?

A.当然、ソーシャルメディアなどを活用した告知もたくさんやっていると思いますが、キャンパス内や街頭に大きなバナーをたくさん掲げていたのが目に付きました。試合があるということが、ハワイ中に浸透しています。また、あれだけ人が集まるということは、よほどふだんから大学と地域住民の関係構築ができているのだと思います。

Q.試合の内容はいかがでしたか?

A.練習から見ていたのですが、前日練習では1時間ずつ4チームが練習していました。ふつう、米国では選手たちがばらばらに来てアップして、ゲーム練習までに皆が準備するという印象でしたが、そのときは整列して規律だった練習をしていました。 練習では、リベロとセッターのコンビネーションがいま一つかなと思ったのですが、試合になったら素晴らしかったです。バレーではセッターとリベロが雑だとプレーの質が落ちてしまいますが、試合になると丁寧さが加わっていました。ハワイ大学は大会を視察した時点で、1セットも取られていないという記録を継続していたのですが、強い理由がよく分かりました。

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Q.観戦スタイルに日本との違いはありましたか?

A.試合中の盛り上がるタイミングなどは日本と同じでしたが、セット間の演出がまったく違いました。日本の試合ではセット間は1分半ほどですが、時間を延ばしてチアリーダーがパフォーマンスするなど、さまざまな試みをしていました。日本では試合だけに集中していますが、米国はプレー以外でも常に観客を楽しませようとしていました。

Q.チームの運営体制で参考になる点はありましたか?

A.シンプルに、サポートする人間をもっと増やす必要があると感じました。現在、筑波大学のバレー部員は試合に出るレギュラーの7人と、ベンチメンバーの14人、合計で20人ほどです。人数が少ないので、組織として小気味よく動けるという利点はあります。しかし、トレーナーやマネージャー、アナリストなどスタッフのことを考えると、もう少し増やしていった方がいいのではと感じました。もっと役割分担ができれば、選手としては試合に出られなくても、後方支援で活躍できる子も出てくると思います。ただし、選手が練習の準備や片付けをするなど、日本の部活の文化には教育的に良い面もあるので、日本もすべてを捨てる必要はないと思っています。

Q.ハワイ大学のADスタッフとはどのような話をされましたか?

A.アスレティックディレクター、副ディレクターに加えて、男女バレー部、アメフト部などのコーチたちと話をしました。スポーツだけでなく勉強についても求めるレベルが高く、大学として文武両道の学生アスリートにとても期待していることが伝わってきました。また、筑波大学に非常に興味を持ってくれており、今後のAD同士の交流に向けた話もできました。

Q.筑波大学では今後キャンパス内にアリーナを建設して、ホームゲームの実施を計画していると聞いています。

A.今回の視察で大学スポーツにおけるホームゲームの運営や雰囲気を学ぶことができ、今後目指すべきところが明確になりました。学生たちにとっても、大変貴重な経験だったと思います。アメリカのADは100年かけて今の状態になっているので、いきなりあそこに持っていくことは難しいと思います。また、関東の1部リーグだけでも12チームある中で、足並みがそろうまでには時間が掛かるでしょう。しかし、できる大学からとりあえずトライしてみることが重要だと思います。

Q.今後、ホームゲームの実施以外に、筑波大学のバレー部としてどのような取り組みを考えていますか?

A.ADのマーケティング機能とうまく連携して、活動の幅を広げていきたいと考えています。チームだけでは限界もあるので、ADにうまく情報を発信してもらいながら、地域貢献活動や公開講座などにも積極的に取り組んでいきたいです。

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