【JCAお悩み相談室vol.8】暑い時期の活動で指導者が意識すべきこと、具体的な取り組みを教えてほしい!

▽お悩み

少年野球の指導をしています。
夏場は熱中症を防ぐために、水分をまめに補給させたり、練習自体も早朝に行ったりしています。しかし、試合は暑い日中に行われることが多いので、いつ事故が起きないか不安になります。
あまり神経質になりすぎると、夏場は野球ができなくなってしまいますが、暑い時期の活動や熱中症対策として、指導者が意識すべきことや具体的な取り組みなど、教えていただければ幸いです。
(40代男性)

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◎高尾美穂 医師からの回答

これからの暑くなる時期、スポーツ競技の現場で活動する指導者の方々に知っていただきたい「暑熱対策」についてお伝えします。

暑熱環境(外気温28℃以上の環境)下で運動すると、深部体温(直腸温や食道温など身体の核心の温度)が過度に上昇することがあります。運動により引き起こされる高体温は、末梢の代謝や心臓血管機能、水分バランスにも影響し、また脳血流量や認知機能などの中枢神経系へも直接作用します。これらの末梢および中枢神経系の変化が、疲労や持久性パフォーマンスの低下を引き起こし、時には熱中症につながります。

対策としては、当然のこと、と思われるかもしれませんが、「水分補給」と「身体冷却」の2つが重要です。その効果的な方法をお伝えします。

1つ目の水分補給。皆さん、夏場は特にこまめな水分補給に気を付けていらっしゃるかと思いますが、水分の取り方にも効果的な方法があります。

持久性運動では筋肉で熱が生まれるため、体を冷やした状態で動き始めた方が長く動き続けることができます。そのため動き出す前に、冷たいと感じる程度(4℃)の水を飲むことが有効とされています。さらに効果的なのが、シャーベット状の氷飲料(アイススラリー)で水分を摂ること。摂らなければいけない体積よりも少ない量で、体を効果的により早く冷やすことができるというデータが出ています。

アイススラリーを摂ることで深部体温が下がり、発汗量が減って脱水を防ぐことができ、また主観的な疲労感が減ります。運動中に摂ると、深部体温の上昇を抑えることができ、持久系の競技は長く、パフォーマンスを落とすことなく続けることが可能となります。

しかしながら、かき氷状(アイススラリー)での水分摂取は、現実的には酷暑のグラウンドや体育館では用意してもすぐに溶けてしまうため、実用的ではないかもしれませんが、摂り方としては一番効果があるということを覚えておいていただきたいと思います。

2つ目は身体冷却です。休憩時間を適度に確保し、体温を下げる機会を持つことが大事です。方法としては、前腕部、肘から手の先までを流水につけたり、氷水につけたりすることで深部体温の低下に繋がり、持久系の競技では特にパフォーマンスを落とさずに長く続けられるようになります。

他にも、ネッククーラーで首を冷やす、クーリングベスト(トレーニングや試合前のウォーミングアップ、試合後のクーリングダウン時に着用可能)の活用など、競技時間帯や環境によって、冷却のタイミングについて検討し、実施していただくのが良いと思います。

特に女性の場合は、生理周期の高温期にあたる時期に暑熱環境下で運動した場合、動けなくなるまで=パフォーマンスが落ちるまでの時間がより短くなってしまいます。女性選手を指導されている指導者の皆さんには、その事実は必ず頭に入れていただきたいことの一つです。

このように、暑熱環境は競技時間の長い種目にネガティブな影響を与えますが、一概に暑いことは悪いことだけではありません。競技時間の短い種目、短時間の高強度な瞬発的な動きを伴う競技では、暑い環境の方がパフォーマンスが上がるというデータがあります。ただし競技が終わったら、涼しい場所に退避して休憩できるようにしましょう。

この夏も酷暑が予想されますが、まずはきちんと睡眠と食事を摂り、適切な予防対策を実施してパフォーマンスアップを目指しましょう。

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高尾 美穂 Miho Takao
産婦人科専門医・医学博士・日本スポーツ協会公認スポーツドクター・株式会社ドーム委託契約医師・一般財団法人日本スポーツ振興会理事

東京慈恵会医科大学産婦人科大学院、慈恵医大付属病院産婦人科勤務を経て、2011より株式会社ドームの委託契約医師に。産婦人科医として、婦人科手術・婦人科検診などの業務に携わる傍ら、女性特有のカラダの周期的変化をアスリートのパフォーマンスアップに繋げるために、医学的見地から女性アスリートをサポートしている。