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『ワシントン大が脳震とうを簡単にチェックできるスマホアプリを開発』

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■要約

・ワシントン大が脳震とうを診断するためのスマホアプリを開発した。

・自覚症状のない軽度の脳震とうを正確に判別できる。

・研究チームは2年以内の商品化を目指している。

■本文

※出典:NEW ATLAS

脳震とうは米国で社会問題になっているが、症状の軽いものの中には、気づかないうちに健康に危険な影響を与えている場合がある。現在研究が進められている新しいスマートフォンアプリは、この分野について重要な情報を提供してくれる。脳震とうの兆候がある選手をカメラで撮影しスキャンすることによって、診断を行うのだ。

脳震とうが発生してから7日後まで、眼球運動を追ったり血液検査をしたりすることでその兆候を捉えることができるが、自覚症状のない脳震とうの診断について、大きな進展を期待できるだろう。第一にアスリートが脳震とうであるのか、そうではないのかの診断が重要だ。なぜなら、脳震とうを受傷した選手は頭痛や記憶の欠落などの即座の症状に見舞われるだけではなく、すぐには兆候が現れない長期スパンでの健康リスクを負ってしまうからだ。

よって、サイドラインで即座に脳震とうの検査をすることができるスマホのアプリは、とても有効である。そして、それはまさにワシントン大の研究者たちが解明したい問題に直結している。「PupilScreen」と呼ばれる技術は、選手たちの光への反応や外傷性脳損傷の判定をするのにも用いられてきた、「対光反射」として知られている。

対光反射が重とくな外傷性の脳障害の診断に使われる一方で、最近の研究では軽い脳震とうのような症状に対しても有効であることが明らかになってきている。よって、ワシントン大のメンバーが開発したスマホカメラを使い、ディープラーニングツールを導入した新しい知見を活用することによって、パッと見ただけでは分からない軽い脳震とうの症状も判別することが可能になるのだ。

スマホのフラッシュは、カメラで撮影した3秒間の動画の目の動きを計算するのに使われている。各選手によって視線の軌跡は変わるため、ディープラーニングのアルゴリズムが軌跡の変化を分析し、それぞれ選手がどのような状況にあるのかを判断する。

ワシントン大のチームは、脳の外傷と患者の健康の相関も含めた、48項目にも及ぶ研究を重ねてパイロット版の制作にこぎつけた。アプリを使用することによって、臨床医は病院の高価な精密機械で見るのと同様の、ほぼ完璧で正確な診断結果を得ることができた。

ここから数ヶ月でチームは幅広い臨床研究を行い、アプリがコーチや医者、医療技師にとってより使いやすいものに進化させていく。彼らはカメラをスマホに内蔵させることで光の量を調整するなど、システムの改善も試みている。そして、2年以内の商品化を目指して研究を続けている。

我々が目指すビジョンは、「スマホさえ持っていれば、アプリを使って脳震とうの判定ができること。患者もコーチも介護士も救急医療技師も、脳に関わるすべての人たちがこのアプリのみで対応できるようにしたい」と研究チームのリーダー、Alex Mariakakisは目標を語る。

■JCAのPoint of View

脳震とうは米国で大きな社会問題になっていますが、未だにその全容が解明されていない病気です。東京慈恵医科大学病院の脳神経外科である高尾洋之先生は、「脳震とうは頭痛などの自覚症状がないと、患者さんが外来に継続的に来ないことがよくあります。放っておいてうつ病になるなど、後から症状が出てくることもよくあります」と脳震とうの危険性について語ります。今後、このアプリが広く使われるようになれば、病院に行かなくても現場で簡易に脳震とうかどうかチェックすることができます。そして、様々な競技における脳震とう受傷者のデータが蓄積されていけば、病気の全容が解明される日も来るかもしれません。