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『文武両道を徹底するNCAAの戦略的な取り組み APRに学ぶ』(前編)

ディビジョン1の学生アスリート、過去最高の学業成績をマーク
全体のAPR、1000点満点中983点

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NCAAディビジョン1の学生アスリートたちが、かつてないほどハイレベルな学業成績を収め続けている。チーム単位で測定される APR(Academic Progress Rate)の直近4年間の全体平均は1000点満点中983点。これは過去最高点だ。
競技別では、女子バスケットボールが982点、野球が976点、男子バスケットボールが967点、アメリカンフットボールが964点などとなっている。

注)競技別APR(直近4年間)
男子では、体操とスキーが989点、ライフルとアイスホッケー、バレーボールが986点がハイスコア。

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女子では、スキーが997点、体操と水泳が993点、ラクロスが992点とハイスコア。

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NCAAのマーク・エマート会長は、ディビジョン1の学生アスリートの学業への取組を次のように称賛する。「ディビジョン1の学生アスリートが、継続的に高いレベルで学業への取組をしていることを誇りに思う。我々は引き続き、学生アスリートの究極の目標は立派に学問を修め、大学を卒業することであるという姿勢を堅持し続ける」


規模がさほど大きくない大学のチームも、継続的に改善している傾向が見られる。NCAAでは、大学の規模を、学生一人当たりの学校全体の支出、アスレチックデパートメントの予算、連邦政府の補助金額によって規定している。この規定で「小規模」となった大学のチームは、2010-11シーズンに945点だったのが、17-18シーズンは969点にスコアを上げた。

また、歴史的黒人大学(HBCU:人種隔離政策の時代に、黒人学生に高等教育を施すために設立された大学)は、2010-11シーズンの918点から相当な改善を重ね、今回は960点にまで伸ばした。

なお、各競技のポストシーズン試合に出場するためには、4年間平均のAPRで930点以上が必要だ。このスコアを達成すれば、チームの半数の学生アスリートが卒業できることを示しているからである。930点に達しない場合、チームには罰則が科せられることになる。

ジョージタウン大学の学長で、ディビジョン1のアカデミック委員会委員長も務めるジョン・デジオイア氏は、APRの持つ影響力を次のように評価する。
「アカデミック委員会は、大学同士の試合に関与している学生にAPRがポジティブな影響を与えていることを称賛したい。毎年卒業する何千人もの学生が、生涯を通じて大学教育から恩恵を得ることになる。我々は、こうした学生たちの成功と、彼らが教育に継続的に関心を持ってくれることを誇りに思う」

APRは、卒業率ということよりも、学業の進展をリアルタイムに測ることを重視して設定された。奨学金を得ている学生アスリートが、その次の年も奨学金資格を得れば1ポイント、さらに進級または卒業すれば1ポイントを得る仕組みだ。ディビジョン3などで奨学金制度を持たない大学は、勧誘して入学した学生アスリートのポイントを計測することになる。

ディビジョン1に所属するすべてのチームは毎年、APRのポイントをNCAAに提出する。そして、NCAAは罰則適用の根拠となる単年度および4年間平均のスコアを公表する。また、提供されたデータに基づき、全国集計も行われている。チームリストや各チームのAPRスコア、罰則を受けたチームなどの情報は、NCAAのリサーチデータベースを通じてオンラインで公表される。

広報担当
Michelle 


*APRとは何か

Academic Progress Rate
APRとは、NCAAが学生アスリートの卒業率を追跡調査するための指標

背景

APRは、1990年に制定された「学生の知る権利法」がきっかけとなり、導入された。「学生の知る権利法」とは、大学がよりアカデミックで、かつ学生アスリートが学業を成就できるような環境を整える目的で制定された法律だ。

しかしながら、NCAAによると、1993年から96年にかけて入学したフットボール選手で、6年間で卒業できた者は51%、バスケットボール選手に至っては41%という散々な数字だった。

こうした結果を受けて、NCAAは2004年、APRを含めて学生アスリートの学業進展度合を計測する新しい手法を導入した。

NCAAのリサーチサイエンティストであるトーマス・パスカスが開発した手法では、4年間の平均APRが925点以下となった場合に奨学金資格を失い、900点以下ではポストシーズン試合の出場が禁止されるなどの罰則が設けられた。

そして、2011年には、罰則適用のAPRが930点に引き上げられた。


APR測定手法

APRは、奨学金を得ている学生アスリートが、年間を通じて科目ごとにどの程度の成績を収めたかを測定する。チームは、その奨学金獲得学生アスリートの合算成績で評価され、基準値の930点に到達しなかった場合、罰則が与えられる。

NCAAは、基準値に達しなかった学校と共同で、チームを改善するための施策づくりを支援する。

APR930点は卒業率50%に相当するが、その計算方法は以下の通りとなる。

・奨学金を得ている学生アスリートが、その次の年も奨学金資格を得れば1ポイント、さらに進級または卒業すれば1ポイントを得る
・チーム内の奨学金受給学生アスリート全員の合算されたポイントを基に、そのチームのAPRスコアがはじき出される
・たとえば、チームに85人の奨学金受給学生アスリートが在籍し、そのうち80人が在校かつ学業適正(80人が2ポイント獲得)、さらに、3名人が在校しているが学業不振(3人が1ポイント獲得)、残りの2名がドロップアウトの場合、80×2+3=163、このスコアを全員満点の場合の170で割り、それを1000倍した「959点」が、このチームのAPRスコアとなる
・NCAAはこのスコアを毎年計算し、930点に達しないチームには、奨学金減額や練習時間削減などの罰則を科す
・罰則は、930点に達しない年数によって段階的になされるが、4年目になるとNCAAのメンバーシップの一部停止や大学全体のスポーツ活動に対する制限、ディビジョン1からの離脱など最も厳しいものとなる